2016年最後の日も間もなく終わりを迎え、また新しい年がやってきますね。まず、本サイトをご覧になって下さった皆様にお礼申し上げます。
今年最後の記事は、恐れ多くもアレキサンダー・エルダー博士の手法の有効性を確かめてみよう、という趣旨のものです。
エルダー博士と言えば真っ先に来るのが名著として知られる『投資苑』ではないでしょうか。シリーズ化された『投資苑』以外に、トレード手法について端的に書かれた電子書籍に、『エルダー博士のダイバージェンストレード』というものがあります。本書は他の著作でも触れられているMACDダイバージェンスを用いたトレード手法と実例のまとめといった風合いの電子書籍で、一冊数百ページに及ぶ他の著作に比べるとページ数も少なく価格も安いため、気軽に読める一冊になっています。今回はそのMACDダイバージェンスの有効性について検証していきます。
ダイバージェンスとは?
ダイバージェンスについて真面目に書いていくと数記事以上に渡る分量になるので、ここでは軽く触れる程度に止めます。
「ダイバージェンス」= 「逆行現象」
何と何が逆行するのか? と言えば、価格とオシレータの動きの逆行になります。
弱気のダイバージェンスの例
この例では、まず一番左側、価格は高値を更新していますが、オシレータであるMACDの山の高さは切り下がっています。つまりオシレータの勢いは衰えているが価格は上昇している。
こういう場合、往々にして価格も勢いを無くしてこれまでと反対方向に動きやすくなります。結果的に右に行くにつれて(時間の経過につれて)高値を維持できず大きく下げています。
また、MACDの左側の山から右側の山では、山の高さはわずかに切り上がっていますが、価格の高値は切り下がっています。こうした場合でもオシレータが上昇の勢いをなくし、価格が反転する契機になる場合があります。後者は、ヒドゥンダイバージェンスと呼ばれます。
強気のダイバージェンスの例
二番目のチャートはごく最近出た強気ダイバージェンスの実例です。ポンド円日足の安値が切り下がっていても、オシレータは底値が切り上がっており、価格の下落の勢いが弱まっていたことが見て取れます。その少し後にアメリカ大統領選があり、ご存知の通り一気に円安ドル高に動いてクロス円も大きく上昇しました。ただしその前に既にその予兆が出ていたということになります。
このチャートでは、価格は明らかに安値・高値を共に切り上げていますが、MACDは底値を切り下げています。上昇トレンド中の調整で、オシレータの下降の動きに価格が着いていくことを拒否し、オシレータの下降が止まったら価格が再上昇を開始しています。上昇~押し~再上昇という流れでたまに見られるパターンになります。こちらがヒドゥンダイバージェンスになります。
MACDダイバージェンストレードの検証結果その1
まず申し上げておきますが、検証の途中経過報告として読んで下さい。細かくメモを取りながらFT3で検証しているため、試行回数はまだまだ少ないです。
条件・エントリー・利食い・損切りルール
※注意事項
電子書籍に、『エルダー博士のダイバージェンストレード』では、MACDヒストグラムを使用することが書かれていますが、ここではMT4標準のMACDを使用しています。スマートフォンでトレードを完結させるため、AndroidおよびiOSのMT4アプリで使用することを想定して試験をしております。ご了承のほどお願いします。
※1/9追記
MACD2などの名称ではありませんが、MT4標準インジケータのMoving Average of Oscillator がMACDヒストグラムに相当するのに気付いていなかったため、延々と標準MACDで先に検証してました…。第4回以降、Moving Average of Oscillatorを使用して、本来使用されるべきMACDヒストグラムによる検証を進めていきます。
条件
- 通貨ペア … ポンド円
- 時間足 … 4時間足
- 1トレードのロット … 10000通貨
- スタート資金 … 10000USD
エントリー
- MACDダイバージェンスが確認されたこと
- ショートエントリー : ダイバージェンス確認後、MACDの山が下りに転じる
- ロングエントリー : ダイバージェンス確認義、MACDの谷が上りに転じる
利食い
- ショートポジション : 直近の安値近くのローソク足終値または1~2回前の高値のローソク足終値付近(サポートラインになりそうな目立つ高値)
- ロングポジション : 直近の高値近くのローソク足終値または1~2回前の安値のローソク足終値付近(サポートラインになりそうな目立つ高値)
損切り
- ショートポジション : 通常のダイバージェンスの場合はエントリー時点の高値の少し上まで上昇したら損切り。ヒドゥンダイバージェンスの場合、エントリー時点の高値より手前のヒドゥン起点になる高値 or エントリー時点の高値(価格差が100pips以上あったりしたら後者を使用)
- ロングポジション : 通常のダイバージェンスの場合はエントリー時点の安値の少し下まで下降したら損切り。ヒドゥンダイバージェンスの場合、エントリー時点の安値より手前のヒドゥン起点になる安値 or エントリー時点の安値(価格差が100pips以上あったりしたら後者を使用)
チャート画像
できるだけダイバージェンスラインを自分で引いて、必要な箇所にメモを付記しています。
結果
- 試行回数 … 32回
- 勝ちトレード…19回
- 負けトレード…13回
- 最大連勝回数…5回
- 最大連敗回数…3回
- 通貨ペア … ポンド円
- 時間足 … 4時間足
- ロット … 1万通貨
- 時期 … 2001年3月~2002年12月16日
- 開始時資金 … 10000 USD
- 終了時資金 … 13651 USD
- Profit Factor … 3.27
- 一日あたりトレード回数 … 0.04
勝率は6割程度でしたが、取れるときには大きく取れるため、プロフィットファクター3.27をマークしました。レバレッジ2倍未満のトレード32回で36%の資金増加となり、今のところ非常に良い結果に見えます。
ただし欠点として、一日のトレード回数0.04、つまり25日に一度しかトレードチャンスがないわけです。利食いまでの時間も長く、忍耐力を要する手法になります。
また、反転を狙う手法になるため、ダイバージェンスが出ずに反転した場合は、ただただトレンドに沿って価格が伸びていくのを指をくわえて見ているしかない状態が続きます。これ一本でのトレード継続はまず難しそうです。
しかしながら、少ない試行回数からでも、素晴らしい破壊力を秘めていることが伺えます。
改善案1. 上位時間足の併用
とおり一遍ですが、例えば上位時間の日足でダイバージェンスが出ており、4時間足が通常のMACD反転を見せた場合は、MACD反転にしたがってエントリーすれば勝てていた局面がいくつか見受けられました。
この日足チャートは強気ダイバージェンスを出して8円以上の上昇をしましたが、これを根拠に4時間足のMACD陽転でエントリーできていればかなり大きく取れています。
改善案2. 長時間のダイバージェンス+短時間内のダイバージェンス
通常は、他のオシレータ同様に、山→谷→山、がダイバージェンスの基本であり、ゼロラインや50%ラインをまたがない価格とオシレータの乖離はダイバージェンスとして扱うべきではないというのが教科書どおりのやり方です。
ただ、そのやり方では上記のような二番天井からの下降や二番底からの上昇を捉えにくいため、この状況が発生した場合のトレードルールを追加・検証した方が良いという考えに至りました。
年明けから時間を見つけてこの二点の検証をしていこうと思います。今年はいったんここで休眠に入ります…。
来年も本サイトを宜しくお願い致します!!
MACDトレード用の便利ツール紹介(1/14追記)
MACDダイバージェンスを自動描画してくれる無料インジケータ
ライン(EMA)表示バージョン FX5_MACD_Divergence_V1[1].1.mq4 [表示]
ヒストグラム(MT4標準)表示バージョン FX5_MACD_MetaTrader.mq4 [表示]
※いずれも「ダイバージェンス候補」の表示です。EMAの山谷やヒストグラムの頂点の確定前の状態の、ダイバージェンスの可能性あり、の段階で表示されます。
MACDヒストグラムダイバージェンスを自動描画してくれる無料インジケータ
こちらはMACDヒストグラム(OsMA)ダイバージェンスを素直に表示
何かを修正しているようですが、ヒストグラムの山の高さなどが微妙に異なります。精度はこちらが上か。
MT4のMACD、各種ダイバージェンス自動描画インジケータ、OsMAを一画面に表示してみました。Correctは何を「修正」してるんでしょうか…。今度調べてみます。
MACDウォッチャ
MACDとSignalのクロスやSignalとゼロラインのクロスを監視、各種条件を設定してクロスしたらメールでアラートを飛ばしてくれるツールです。忙しい方はこうした自動化ツールを活用するのも手です。
MT4 MACD ウォッチャ
WatcherMACD
MACDによるトレンドが出ている通貨ペアを効率よくサーチできるMT4インジケータ。MTF(マルチタイムフレーム)で方向がそろっている通貨ペアを一目で見つけられます。ひとつひとつチャートを開いて物色する手間も省けますね。
WatcherMACD画面イメージ